て横たわってるのを見出しました。彼は死の叫び声を立てました。大勢かけつけました。多くの叫び声が起りました。
崔之庚は徐和の悲惨な死体を見て、激しい憤怒の色を現わしました。然し、物に動じない言葉の調子でした。
「死体は鄭重に扱うがよい。」
それから、急に声を震わしました。
「その太湖石は血に汚れたものだ。河に運んで沈めて来い。池のことはもう中止だ。前よりも浅く埋めてしまえ。」
どうしてその惨事が起ったかを取調べようともしませんでしたことを、誰も気付く者がありませんでした。
命ぜられた通りに行われました。召使達は徐和の死体をその生前の室に運び、泥を拭き清め、血を拭き清めました。
そして薄暗くなりかけた頃、大きな太湖石は数人の者に運ばれて、曹新もその供をし、遙か下手の方で、河の中に投ぜられました。夕闇の中で、石は水面にちょっと浮いて止ったように見えましたが、すぐにすーっと沈んで、泡がたち、泡のあとに、真黒な渦が巻いて流れました。
一同は、無言のまま、後をも見ずに家へ帰りました。
徐和の葬儀は簡略に行われました。崔範の小廟から少し離れたところに、小さな石をのせた土饅頭が一つふえま
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