見て取れなかった。ただ、吉川の死は英子と別れてから一ヶ月よりずっと後であるということと、その死は自殺とも病死とも云えないものであるということだけが、ほぼ明かになった。
周平は吉川の日記を幾度もくり返し読んだ後、更にそれを手早く写し取った。それから用心のために、写したものは自分の下宿へ行ってしまって来た。ひどい精神の疲労を覚えた。そして、何だかこのままでは治りがつきそうもない気がした。それでも構うものかと思った。ぶつかるものにぶつかっていけと心を定めた。
彼は二階の室に寝転んでばかり日を過した。朝といわず夕方といわずすぐにうとうととした。かと思うとはっと眼を覚した。頭がぼんやりしていた。それが夜になると、いやに頭のしんが冴え返った。吉川のことが自分の心の中のことであるような気がしてきた。その半ば自棄的な気持の底から、彼はいつのまにか保子のことを考えていた。眼の前に彼女の姿を浮べていた。遠い過去の恋人ででもあるかのように、その姿を彼はじっと眺めた。しみじみとした哀愁の念に囚えられた。そしては、またはっと我に返った。
この哀愁の心と、何物にもぶつかっていけという心と、そのどちらが本当の
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