は云った。「お母さんのことを云っちゃいけないって、お祖母《ばあ》さんが云ったよ。けれど僕は、お母さんの絵も描いてやるんだ。構やしない。お母さんはそんな悪い人じゃないよ、屹度。僕に悪いことが起ったら、お母さんが助けに来てくれるような気がするよ。お父さんは死んだんだけれど、お母さんは生きてるんだって。本当? そんなら僕探し出してやるよ」
 怒ってるのか泣いてるのか分らないような調子だった。云ってしまってからも軽く身体を揺っていたが、すぐにそれをぴたりと止して、不快らしい皺を眉根に寄せ、何やら考え込んでしまった。
「どうして探し出すの」と周平は追求した。
「分らない。大きくなってからだよ。」
「お母さんの顔を覚えてるの?」
「覚えてない。」
 隆吉は吐き出すようにその答えを投げつけてから、此度は本当に怒ったらしかった。口をきっと結んで眼を伏せながら、いつまでも黙っていた。

 その気持が、周平にも感染してきた。誰にともない暗い憤りを身内に覚えた。
「隆ちゃん、」と彼は云った、「お父さんはどうして死んだか知ってる?」

 隆吉は黙って彼の顔を見返した。問いの意味が分らないらしかった。
「お父さ
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