のものに対する感じを、本質的に変化させるようだね。」
実際、やがて食膳に上せられた蒲焼には、生きてた時の鰻の感じは殆んど残っていなかった。周平は変な気がした。変だといえば、横田や保子や隆吉などに対しても、変な気がしてきた。先刻まであんなに苦しんできた問題が、いつのまにか底の方へ隠れて、平和な晩餐の気が座を支配していた。横田はちびりちびり杯をなめていた。保子は火にほてった顔を輝かしていた。隆吉は旨《うま》そうに蒲焼をしゃぶっていた。
周平は黙って杯の数を重ねた。
「井上さんは、」と保子が云った、「飲めないような顔をして随分飲めるのね。」
「飲めないような顔って、どんな顔なんです。」と周平は云った。
「あなたみたいな顔。鏡でみてごらんなさい。」
周平は突然不快を覚えた。彼は自分の顔立の欠点を知っていた――眉と眼との間が迫り、鼻がわりに長く、※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]が短かった。それを今保子から軽蔑されたような気がした。何とか云い返してやりたく思ってると、横田が口を開いた。
「では、僕の顔はどんな顔なんだい。」
「銅像みたいですよ。酒なんかぶっかけても当分はげそうにない
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