方は見ないで、眼を伏せている。
「すこし、喜美ちゃんをいじめすぎたらしいのよ。」
「そんなことなら、僕にあやまることはないじゃないか。」
「そうだけれど、梶山さんにも関係があってよ。昼間、焼け跡で、梶山さんと何の話をしてたかと、いくら聞いても、何の話もしなかったと言うんでしょう。長い間二人でいっしょに腰掛けていて、口を利きあって、それで何の話もしないなんて、そんなことがあるもんでしょうか。でも、どうやら喜美ちゃんの言うのがほんとらしいわね。」
「ああ、あれか。なるほど、喜美ちゃんはうまいことを言うね。野原のことや、川のことを、僕が独りで饒舌ってたんだ。喜美ちゃんは聞いてたかどうかも分りゃしない。まったく、何の話もしなかったわけだ……。君も見たのかい。そんなら、声をかけてくれたっていいじゃないか。」
「しばらく立って見てたわ。でも、声をかける隙がないんですもの。」
「声をかける隙がない……なんだい、それは。」
「何と言ったらいいかしら……。まあね、二人で、心中の相談をしてるとか、そんな風で、声をかける隙がないのよ。」
「ばかだね、そんなことを……。」
「でも、わたしが男なら、喜美ちゃんと
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