なたの家には何か変なことはなくって、と黒田さんが仰言るのよ。私何のことだか分らなかったから、よく聞いてみると、この家は前から評判の家ですって。何だか怪しいことがあるんですって。それで、どの人もみんな、はいるとじきに引越していって、空いてる時の方が多かったそうですよ。そこへ私達がやって来て落付いてるものだから、知ってる人は不思議がってるんですって。……ほんとに何のこともないの、としつこく黒田さんが仰言るから、ありはしないわ、よしあったって少し位は平気よ、二十世紀の者はお化なんか信じないから、と云ってやったわ。だけど……。」
「奥さま!」と襖の向うから声がして、女中の清が顔を出したので、秋子は俄に恐い眼付をして見せた。綾子は何のことだか分らずに、きょとんとした顔で口を噤んだ。
 秋子は尋ねられた用事を清に答えておいて、それから暫くして、真顔で向き直ってきた。
「そんな話を誰にもしてはいけませんよ。………そして、何か変なことはないかと人に聞かれたら、何にもないと答えるんですよ。」
「なぜ?」
「なぜって、もしおかしな評判でもたってごらんなさい……。」
 それがどうしていけないかをはっきり云い
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