白血球
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)上気《じょうき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)廊下|側《わき》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]々
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がらり…………ぴしゃりと、玄関の格子戸をいつになく手荒く開け閉めして、慌しく靴をぬぐが早いか、綾子は座敷に飛び込んできた。心持ち上気《じょうき》した顔に、喫驚した眼を見開いていた。その様子を、母の秋子は針仕事から眼を挙げて、静かに見やった。
「どうしたんです、慌てきって。……今日はいつもより遅かったようですね。」
「ええ、お当番だったのよ。」
手の包みを其処に置いて、袴も取らずに坐り込んで、それから、低い強い語気で云い出した。
「お母さん!」
「え?」
仕事の手を膝に休めて、秋子は顔を押し進めた。
「お母さん!」とくり返して綾子は一寸息をついた。「この家《うち》は変な家ですってね。」
秋子は黙っていた。
「今日ね、あ
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