んです。こちらが汽車の窓で、向うが電車の窓で、両方平行して同じ速力で走っていた、そのことが、不思議なほどはっきりと心に刻まれていて、いつまでもひっかかってるんです。」
「そんなものかね。」
「それは変な気持ですよ。」
 真顔で云われて、私も何だか少し分りかけてきたように思えた。
 電車の音がまた響いてきた。初秋の日の光が澄みきっていた。



底本:「豊島与志雄著作集 第二巻(小説2[#「2」はローマ数字、1−13−22])」未来社
   1965(昭和40)年12月15日第1刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2007年11月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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