二等車に乗る男
豊島与志雄

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)歩廊《プラットホーム》

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(例)小説2[#「2」はローマ数字、1−13−22]
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 十一月の或る晴れた朝だった。私は大森の友人を訪れるつもりで、家を出ようとしていると、高木がやって来た。
「お出かけですか。」
 玄関につっ立ってる私の服装をじろじろ眺めながら、高木は格子戸の外に立止った。
「ああ。……だが一寸ならいいから、上ってゆかない。」
「ええ……でも……。」
「実は約束しているので、余りゆっくりはしておれないが、暫くならいいから上り給え。」
「どちらへいらっしゃるんです。」
「大森まで。」
「大森。」
「ああ。」
「じゃあ……そこまで御一緒に行きましょう。」
 その「じゃあ……」を変にゆっくり口籠って、それから後を口早に云ってのけて、愉快そうに眼をちらと光らした。変な奴だな……と私は思ったが、別段気にもとめないで、一緒に外に出た。
 私達はとりとめもない
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