れがなぜか、全身無気力に投げ出されたまま竦んでしまって、身動きが出来なかった。
一度……或は二度……母が様子を見に来たようだった。が黙っていた……というより、本当にはっきりとは意識しなかった。
二重眼瞼《ふたえまぶち》の眼がちらちらと動いていた。それが時々じっと真正面から覗きこんできた。
胸の奥がきりきり痛んでいた。
「あたし、あなたが好きになった。……ね……ねえ……。」
感情に抵抗してみるつもりだったのが、その「つもり」のために、却って自分の方から落ち込んでいった。
「あたし、何だか顔見られるのが嫌なのよ。」
畜生……と思って黙ってると、顔が真向になってきた。
「何を考えてるの。」
「困った。……君が好きになりそうだ。」
「そう、嘘にせよ嬉しいわ。」
二重眼瞼の眼が、瞬くたびに微笑んでいた。それが、なりそうどころではなく、本当に可愛くて好きになった。
どうしたらいいか分らなかった。
すぐそこに近々と微笑んでる眼が、いつまでも消えなかった。
それが、夢にも……現《うつつ》にも……朝まで続いた。他の一切はどうなったって構わない。その眼だけが……。
八重という名前の下に
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