同感
豊島与志雄

 私は動物が好きだ。金と余暇と土地とがあったら、出来得る限りさまざまの動物を飼いたい。それも、狭い檻や籠や水器にではない。少くとも見た目に彼等の不自由を感じないほどの場所に、伸びやかに放ち飼いにして、その中に自分をも置きたい。――そういうことを云うと、誰でも大抵は賛成する。そういう欲求は、誰でも大抵持っているものとみえる。ところが、二三の友人が集って、話がたまたまそのことに及んだ時、動物を飼養する場合、人によって態度が凡そ三様に分たれる、という結論に到達した。
 第一は、暴君として動物に臨む態度だ。――A君は、立派な金属の籠に鸚鵡を飼っていた。時には籠から出して、縁側の廊下に放った。在宅の時には、日に幾度も見に出て来る。外出先から帰宅すると、先ず第一にその安否を確かめる。そのくせ、鸚鵡と差向いで一時間と過すことは、殆んどなかった。一寸したことで、不機嫌になるのだった。気に入らない僅かな素振や言葉――そんなものは如何なる鸚鵡にも絶無ではない――に接すると、彼は顔をしかめて立去る。がまたすぐに、様子を見に来る。そして気長に鸚鵡を訓育するなどということは、到底彼には出来な
次へ
全5ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング