る虫の音をきいた。その時私の心は、それらの湯壺や灯火や虫の声などで纒めらるる世界の外に逸した何かを、じっと、そして漠然と、思い耽っていた。その後で安らかな眠りが私にやって来る……。
斯くて私は秋の二週間許りを湯元で過した。その間に私は何を得、また何を失ったか。それは茲には言えない。ただしいてこの小品の結末をつけんがためには、「太古人間は穴居なりき。」という一句を添えれば足りるであろう。
底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2005年12月7日作成
青空文庫作成ファイル:
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