か考えてみることにしよう。」
 良一はさっぱり腑におちなかった。芸奴の一件は、あの女かと見当はついたが、椎の木とか青年のことになると、時々出入りしてるのに、さっぱりそんな様子は見えなかった。何かの誤解かも知れないし、も少し調べてみなければなるまいと、良一は気にかかってくるのだった。
 そして用件はそれだけにして、良一は誘れるままに、支那料理をたべに伯父のお伴をした。伯父は老酒《らおちゅう》が好きだったので、良一もその相手をしてるうちに、いいかげんに酔ってきた。
 伯父と別れて八時頃、良一は川村さんの方へまわってみた。
 川村さんの家は、ちょっと引込んだ構えで、通りから五六間はいったところに、すぐ洋式の扉となっていた。良一がそこにはいりかけると、軒燈の光がうすくさしてる石の門柱のうしろに、背のひょろ長い青年が、帽子はかぶらず、外套の上から腕組をしてつっ立っていた。良一は伯父の話を思いだし、嫌な気持になって、一先ず通りすぎた。暫くして、戻ってきてみると、青年は先程と同じ姿勢で立っていた。良一は顔をしかめたが、思いきってはいっていった。
「もしもし……。」
 声がしたので振向くと、良一の方を
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