りました。
顔丸の丸彦は、さすがに、刀と鉄の鞭《むち》とを手からはなさず、水夫たちをよび集め、がたがたふるえてるのを励《はげ》ましました。そして道をたずねあて、湖水《こすい》のふちにそって、夜も昼も歩きとおして、家へ帰りつきました。
そして丸彦は、兄に今までの出来事をくわしく話してから、いいました。
「申しわけのために、私は死んでおわびをします、あとのことは、よろしくお願いします」
顔長の長彦は、だまって聞いていましたが、しずかに答えました。
「生きるも死ぬるも、まあ私にまかせておきなさい。そしてまず、水夫たちにてあてをしてやって、待たせておきなさい」
それから顔長の長彦は、二日二晩考えつづけました。そして弟にいいました。
「こんどのことは、もうどうにもしかたがない。けれど、私たちには責任があるし、死んだからとて、その責任をはたせるわけのものではない。このうえは私たちだけで、できるだけのことをしてみよう。元気を出しなさい」
そこで、長彦と丸彦はいろいろ相談して、失敗のとりかえしをすることになりました。
まず大津《おおつ》の町までいって、できるだけたくさんお金を借りあつめ、あ
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