最後の清い幻だなどとして、いつまでも心の中に懐いているほど、俺の生活は陰欝なのかしら。それほど自分の生活から華かなものを絶って、やたらに子供ばかり拵えていて、それでどうなるのだ。」
 翌朝になると、また前夜の猫が庭の隅にやって来て、一匹の牝猫に四五匹の牡猫がかかって、皆煤けて泥まみれになって、ぎゃあぎゃあ騒いでいた。地面を掠めてくる軽い春風に、そのうす穢い尿の匂いまで交っていた。
 洋造は嫌悪の念に駆られて、自ら竹竿を持って下りていった。夢中になって脹れ上って、打たれてもびくともしないようなやつを、檜葉や躑躅の茂みの下から、竿の先で突っつき出して、隣家の方へ追いやってしまった。額や背中に脂汗をかいた。
 その様子を、空色の洋服に着かえてる冬子が、泣き出しそうな顔で縁側から眺めていた。
「あっちに行っといで。」
 叱りつけておいて、彼は眉をしかめながら戻って来た。
「だって、お父さま、可哀そうだわ。」
「他所の猫じゃないか。」
 まん円くうち開いた眼の中の、青みがかった白目の縁に、ほろりと透明な水玉が出てきて、それをじっと押え止めるかのように、冬子はあくまでも眼を見開いていた。が……大き
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