会合でも催してみようじゃないか。それまでに誰か、お常でも、も一人子供を産んでくれて、十五人になると丁度いいんだが、然し十四人だって、俺の四十という年を逆にした数だから、却っていいかも知れない。」
八重子は眉根をぴくりとさして、何とも言わなかったが、彼がその日の書信に眼を通し終って生欠伸《なまあくび》をかみ殺してる頃、不意に彼女の方から尋ねかけた。
「あなた、お千代がまた子供を産むと云うのは、本当のことでございますか。」
「本当だとも、そんなことに嘘を云ったって初まらないじゃないか。」
「そして、子供が十四人になったら、皆の顔合せの会をなさるおつもりですか。」
彼女の蒼白い顔に険を湛えてるのを見て取って、彼は少し云い渋った。
「そうさね、お前が皆の母親ということになってるし、お前だけが俺の正しい妻なんだから、万事はお前の気持次第なんだが……。」
「私はどう考えても嫌ですわ。」
「それじゃ止してもいいさ。……だが、お前はこの頃何だか様子が変なようだが、一体どうしたと云うんだい。それとも、初めからの約束が今になって嫌になったのなら、そうとはっきり云ってごらんよ。俺だって考えを変えないこと
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