新妻の手記
豊島与志雄

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 結婚してから、三ヶ月は夢のように過ぎた。そして漸く私は、この家庭の中での自分の地位がぼんやり分ってきた。
 家庭といっても、姑と夫と私との三人きり。姑はもう五十歳ほどだが、主人の死後、長年のあいだ一人で家事を切り廻してきたひとで、気力も体力もしっかりしている。夫は会社員である。さして生活に不自由しない程度の資産があり、都の西郊にある家は、こじんまりしているが庭が広く、裏には竹籔と杉の木立がある。私は三田の叔父さまの世話でここに嫁いできた。もとより、見合い結婚で、恋愛なんかではない。女学校の先生を少ししていたのをやめて、荷物と一緒にこちらへ来てしまった。家庭生活についての希望とか抱負とかも、大して持ち合せてはいなかった。――そして今、はっと何かに突き当った感じである。
 姑、というのもへんだし、義母、というのもへんだから、単に
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