叔父
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)不綺麗《ぶきりょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]
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中野さんには、喜代子という美しい姪があった。中野さんの末の妹の嫁入った武井某の娘だった。
中野さんと喜代子の母とは、母親が違うせいもあったし、年齢も可なり違っていたし、余り仲がよくなかった。その上、中野さんは富有で羽振のいい方だったし、武井の方は零落した貧しい生活をしていたので、両家の交誼はごく疎遠なものだった。それでもやはり、中野さんにとっては、喜代子が美しい姪たるを妨げなかった。
喜代子は時々――といっても二ヶ月に一度くらい――中野さんの家にやって来た。
中野さんには大勢子供があった、男の子や女の子が。そして皆、中野さんに似て不綺麗《ぶきりょう》だった。その中に交ると、喜代子は一段と美しく見えた。
中野さんは美しい喜代子を好きだった。生れて一度も剃刀をあてたことのないような、すっと
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