ない。けれども少年にとっては、文学は身近に存在するものであり、その感銘は直接的である。だから文学は面白くなければならないと同時に、前述の通り何かしら或る重荷の重圧の下にある彼等である故、直接に力を与えてくれるものでなくてはなるまい。観念的な支持を差出してくれるものでなくて、生々しい光を放射してくれるものでなくてはなるまい。なお云えば、彼等を面白がらせると共にじかに救ってくれるものでなくてはなるまい――これが第二の条件。
この二つの条件を考えると、少年文学が如何なるものであるべきか大体の見当はつく。そして少年文学というものが非常に困難なものとなってくる。
*
実際、少年文学は非常に困難なものである。私は前に二つの条件を述べておいたが、それが、現代の時代においては、互に矛盾するもののようである。即ち、現実的であるということは、極端に云えば救われないことに通ずるものであるし、救われるということは、極端に云えば架空的な空想的なことに通ずるものである。この矛盾を克服して、而も面白いものでなければならない。面白いということは最初の条件であること勿論で、随って殊に云わなかったまでであ
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