ちこち物色してるうちに、敏子が勤めてるデパートで、文房具売場のひとが一人やめたので、そのあとなら、はいれるかも知れなかった。次に、先達ての人形の店の夢のような話で、伯母さん親子が作る人形を売るのも、楽しいことに思われた。その二つを、一緒にまとめて考えたのである。小さな文房具店だが、きれいに飾り立て、普通の文房具の外、千代紙だの小箱だの、女の子が好きそうなものを取り揃え、ことに人形、大小さまざま、和洋さまざま、伯母さん親子が作ったものは勿論、硝子棚に並べ立てるのである。文房具にせよ、その他のものにせよ、仕入れが大切だというけれど、幸に、長谷川の兄が政治上の関係から、その方面の卸商たちに知り合いがあり、便宜をはかって貰えるはずだった。そのことは長谷川が引き受けていたのである。
「お兄さんの方、どうなんでしょう。」
長谷川は眼をしばたたいた。
「早くして下さらなければ、困るわ。」
長谷川は苦笑したが、心のうちでは驚嘆の思いだった。人形の店、デパートの文房具売場、それから、人形を看板の文房具店……女の知恵というものは、なんと着々と進んでゆくことか。
「大丈夫、引き受けましたよ。早速、兄に頼
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