りこんで、柿沼と対決してやろうかどうかと考えていた。彼に千代乃を逢わせるくらいなら、自分が逢ってやろう……そういう熱っぽいしかし漠然とした感情が動いた。
地下室、と彼は意味もなく呟いた。
彼は顔を挙げて、石山に言った。
「もう出よう。」
「うん、久しぶりだから、ほかで飲み直そうか。」
「いや、もうたくさん。」
石山は勘定をして立ち上ったが、長谷川は動かなかった。
「僕はちょっと、ここに残ってるよ。先に行ってくれ。」
石山はなんとも言わずに、長谷川の様子を眺め、一つ大きく吐息をして、そして立ち去った。
長谷川はうつろな眼で石山を見送り、それから頬杖をついて煙草を吹かしたが、それを半分きりで灰皿に突っこんだ。
地下室、と彼はまた意味もなく呟いた。そして立ち上った。突然、冷静に返った心地がした。
煙草の煙がだいぶ立ちこめ、スタンドの片端で、がらがらダイスを振ってる客があった。
長谷川は静かな足取りで、真直に柿沼のボックスの方へ行った。
七
長谷川は柿沼の横手につっ立ち、どういう風に言葉をかけようかと迷った。
柿沼は静かに顔を挙げて、長谷川を見た。その眼差しが
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