てらされる彼女の頬は、いつもより美しい。流星だの稲妻だの、電気だの地雷火だの、その他いろんなものが、空中にまた地上に、やたらに爆発させられた。庭の中には、火薬の煙が一杯立ちこめて、物影の方へと逼いよってゆく……。だが、月のない空に星が群れている。その広大な夜の空に、花火や火薬の匂は圧倒されがちだ。いくら続けてもきりがない。子供たちとキミ子とは妙に興奮している。いい加減に切上げさせなければ……とそんな気持に島村は迫られる。
「もうそれくらいにして、またあしたにしましょう。」
 みんな、びっくりしたようだ。が子供は利口だ。そんなら松だという。家の中にはいって、松だの菊だの柳だのと、線香花火がつづく……。
 この花火の一件が――彼女が自分で齎した偶然事が、彼女の精神に何かの影響を与えたにちがいない。子供たちが寝てしまって、アトリエの次の室で、最初の晩と同様に、そしてあれから初めて、島村と二人きりになった時、何となく苛立った感傷を持っていた。彼女の身辺に、まだどことなく、煙硝の匂いが漂っているようだ。
 先生のところへ来てよかった、と彼女は云うのだ。働くことの面白さを、いくらかでも味うことが出 
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