駄々っ児のような恰好をして、片手で砂利を掴んでは投げ散らしていた。驚いたことには、その男はもう髪が半白の老人であり、ひどく酔っ払っていて、それが午後四時頃の明るい昼間だった。
酔っ払っても、ものの見境が無くなってるのではないらしく、四方八方に砂利を投げるのではなかった。冬のことで、峠の茶屋の硝子戸は閉めてあったが、その硝子を避けて、下框のあたりに、彼は砂利を投げつけていた。その時、近所の奥さんらしいひとが店にはいりかけると、その足元へ砂利を投げつけた。彼女はちらと見返ったが、素知らぬ顔をして店にはいった。店の中のおばさんも、素知らぬ顔をしていた。その様子から見ると、彼女たちは彼のことをよく知っていながら、酔っ払ってるから相手にしないという風だった。
彼女たちばかりでなく、実は私も、彼のことを知っていた。度々その店で出逢ったことがあるからだ。近くに住んでる内山昌二という画家だった。画家といっても謂わばよろず屋で、洋画を少し書き、雑誌の※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]絵などを少し書き、漫画めいたものを少し書いていた。
内山が酒喰いなことは、たい
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