ないで、じっとしてるんです。あいつがはいってくると、部屋のなかがぞっと寒くなりますよ」
私はなんだか寒くなって、部屋のなかを見まわしました。
「こっちでじっと見ていてやると、そのままのこのこと部屋の隅《すみ》っこにかくれたり、布団《ふとん》のなかにもぐりこんだりします。そしてあたりがしいんとしてきて、耳をすますと、まだ外には、仲間がいくたりも、十も百も千も、たくさんいるらしんです。はいってくるのは一人ですが、外にはおおぜい待ってるんです」
私は耳をすましました。雪のふる音がきこえていました。
「ゆだんしていると、はいりこんできた奴《やつ》が、だんだん近よってきて、背中にぴったりくっついたり、どうかすると、襟《えり》の間から懐《ふところ》の中にとびこんできます。ひやりとしますよ……」
私はぞっとして、いきなり立ち上がりました。そしてらんまの小窓をしめました。
もうだんろの火はほそくなっていました。私はあらたに薪《まき》をくべました。そして、わきを見ると、正夫は肱掛椅子《ひじかけいす》の上に、うとうとと眠っていました。
しいんとした静けさで、雪のふる音だけがかすかにきこえています
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