。
元はぴたりと立止って、いいました。
「私が破産しかけているのに、お前はなんということだ、寄りつきもしないで、危険な相場を初めたというではないか。ばかな。これからは断じて許さない。金がいるなら、ここに二万金あるから持ってゆくがよい。ただことわっておくが、私が破産しかけているというのは、あれは嘘だ。私の財産にはまだ少しの破綻もない。」
「え、本当ですか、お父さん。それなら安心しました。これから大胆に相場が出来ます。今夜は愉快に友人たちと飲みましょう。お金は頂いていきます、有難うございました。」
一英は金を掴んで、呆気にとられてる元を残して、駆け出していきました。
暫くして、二英が眠そうな眼をしばたたきながらやって来ますと、元は両手を組んでじっと佇んでいました。
元はじろりと見やっていいました。
「私がいつ死ぬか分らぬ身体なのに、お前はなんということだ、寄りつきもしないで、馬ばかり買いたがっているというではないか。ばかな。これからは断じて許さない。金がいるなら、ここに五千金あるから持ってゆくがよい。ただ、ことわっておくが、私が死にかけているというのは、あれは嘘だ。私の身体には少し
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