やだった。胸がむかつくようだ。
酒太郎――夢の話なんか止せよ。胸がむかつくようなら、もっと酒でも飲め。
愛子――この真珠菓子を食べたのが、いけなかったんじゃないの。
時彦――ばか言うな。これを食べたくせに[#「食べたくせに」は底本では「言べたくせに」]居眠りなんかするから、いけないんだ。然し、この男はちょっと変ってるな。夢の話も捨てたもんじゃない。ちっとばかり、気骨を持ってるようだ。
酒太郎――なあに、気骨もくそもあるものか。さあ、飲め飲め。
[#ここから2字下げ]
議一はぼんやり酒瓶を取り上げる。一同も再び飲み食いを始める。席は乱雑になる。
間。
不思議なことが起った。議一を除いて、他の者たちは、後ろから髪の毛でも引っ張られるかのように、時々、手を挙げて後頭部を打ち払う仕種をし、振り向きもする。
[#ここで字下げ終わり]
酒太郎――誰だ、俺の髪の毛を引っ張るのは。
煙吉――誰だ、髪の毛を引っ張るのは。
愛子――だめよ、髪の毛なんか引っ張っちゃあ。
時彦――いたずらは止せよ。
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その都度、互に顔を見合せて、怪訝な面持ちになる。
[#ここで字下げ終わ
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