どはあれにしよう。ぐるぐる廻って、際限なく歌える。この円卓みたいなもんだ。
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一同はノーエ節を歌いながら、円卓のまわりを踊るように歩き始める。歌は終りからまた初めへと連続し、彼等は円卓のまわりを何回も廻る。――ただ議一だけ、腰掛けたままでいる。
ふと、時彦は議一の側に立ち止って、その顔を覗き込む。
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時彦――やあ、これは不思議だ、俺のあの菓子を食ったのに、この男は居眠りをしている。眠られる筈はないんだがなあ。
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皆そこに集まってくる。
[#ここで字下げ終わり]
煙吉――眠られなくなるって、本当かね。
時彦――俺は嘘は言わない。
煙吉――それじゃあ此奴、狸寝入りか。
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煙吉は議一の背中を殴る。他の者も一緒になって殴る。議一は眼を覚して、あたりを見廻す。
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煙吉――お前、ほんとに眠ってたのか。
議一――自分自身がどっかへ、すーっと消し飛んでゆくような気持ちだった。そして夢を見た。
煙吉――どんな夢だ。
議一――河の深い淵だった。上手の方は、浅い瀬で、きれいな水が
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