いい、もう黙ってはおられないところまで来ている。つまり、吾々の方では政治問題に触れまいとしても、政治の方から吾々の身辺に迫って来ているんだ。そういう議論が一同の間に出た。そこで、その原因は何かということになった。一口に言えば、険悪な国際情勢から来る圧力、その圧力を受けてる国家権力の歪曲、その歪曲から生れるさまざまな弾圧的立法……これはもう立派なファシズムだ。徒らに左翼と右翼との抗争のみが激化し、基本人権は侵害され、自由と平和は脅威を受ける。このまま放置しておいてよいかどうか。歪曲された国家権力に対して、何等かの抗議を提出すべきではないか。だいたいそういう結論だったが、当面の実際運動については、次の会合で話し合うことになった。
――これだけ言えば、正夫君、君の胸に応えるものがある筈だ。以前、君がしばしば提出していた意見と全く同じだからね。其後どうしたことか、君は殆んど会合に出て来なくなったし、たまに出て来ても、殆んど口を利かなくなった。だから、今日の会合で、会議のあとの雑談の折に、僕たちが君のことを思い出したとしても、不思議ではあるまい。誰からともなく、君の噂が出た。君がやってるあのち
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