というよりもむしろ立派な坊さんで、善《ぜん》の火の神オルムーズドに仕えてるマージでした。長い間の修行《しゅぎょう》をして、ついに火の神オルムーズドから、どんな物でも煙にしてしまう術を授《さず》かりました。何でも北の方の山奥に住んでいて、そこへ行くには、闇の森や火の砂漠や、いろんな怪物が住んでる洞穴《ほらあな》など、恐ろしいところを通らなければならないそうです。そのマージの不思議な術を見ようと思って、幾人《いくにん》もの人が出かけましたが、一人として向こうに行きついた者はないそうです。
「本当ですか」とハムーチャはたずねました。
「本当だとも、私は確かな人から聞いたのだ」と旅人は言いました。
「だがお前さんには、とてもそのマージの所まで行けやしない。それよりか、自分の手品《てじな》の術をせいぜいみがきなさるがよい」
 そして旅人は行ってしまいました。
 ハムーチャは後に一人残って、じっと考え込みました。――こんな手品なんか使っていたって 一生[#「使っていたって 一生」はママ]つまらなく終わるだけのものだ。それよりはいっそ、その不思議なマージをたずねていってみよう。途中で死んだってかまう
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