より一定不変とは言えない。少しずつ、移動するのは、思想の生長にともない止むを得ないことだ。然し、孤独な境地の中での自由という基調は、どこまでもついてまわる。私はこの基調に於いて、現代の社会を解体する。解体しては新たにまた組織してみる。これが自然に、作品構想の瞑想裡に行われるのである。
 ここで当然、私の社会観もしくは人間観を述べなければならないが、それはなかなか大変なことだから、手取り早く、数言で片付けよう。勿論、文学に関係ある面についてだけである。そして固より、実現の可能性のありやなしやは問題としない。
 私は夢想する。何等の権力も存在しない自由な世界を夢想する。この権力という言葉は、拘束という意味にまで拡大して理解する必要がある。つまり権力とは、服従を強いるものばかりでなく、拘束し制約するものを指す。それが一切なくなるのだ。その上での自由である。だからここでは、各人が各人に対して自由であり、各人が各人に対して自主自立である。そういう世界を私は夢想する。
 これは、断るまでもなく、人間の在りかたについてのことであり、文学上のことである。当面の政治問題や社会問題ではない。また、国家とか
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