。
「あのことについて何とか仰言いましたの。」
「いいえ、何とも。」
暫くすると私の方から云った。
「医者はそうひどいようには云っていなかったんですね。」
「ええ。……でも、悪いんでしょうか。」
「そうでもなさそうですが………。」
低い声でそんな話をしてから、敏子さんは長い間病室の方へ行ったりした。
いつのまにか夜が更けて、もう電車も無さそうだった。私は勧められるままに泊り込んだ。もし吉岡に万一のことがあったら……という思いがいくら追い払ってもちょいちょい顔を出した。春の終りに喀血をして、夏中病床に親しんで、秋風の立つ頃風邪の心地から、急に容態が悪くなった、その全体が一目に見渡された。遅くまで眠れなかった。
後で聞いたのだが、その晩も敏子さんは長く吉岡の側についていた。吉岡はすやすや眠ってる風なのに、突然眼を見開いては、二人共寝てくれと云った。そんなことが何度もあった。それで敏子さんは寝ることにした。看護婦はその晩と前晩と二晩続いて、殆んど一睡もしないと云っていいくらいに、吉岡の側につきっきりだったそうである。
四
翌日早朝に私は起き上った。
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