鞭打たれるような思いをしたものだ。八百円の金を催促してくれるなら、僕は平気でしゃあしゃあとしていたに違いない。そして金を返そうなどとは思わなかったに違いない。然し吉岡君は金銭の負担を僕に荷わしたのではなくて、僕が生命としている芸術の上の負担を荷わしたのだ。僕はそれを間違っていると云うんじゃない。不満に思ってるのでもない。いや却って、本当の友人として感謝してるくらいなんだ。それなのに、僕はそのためにどんなに苦しい思いをしたか分らないのだ。僕は今その気持をはっきり説明することは出来ないが、君にも同感は出来るだろう。」
 私は黙然としてただ首肯いてみせた。
「僕はその苦しさから遁れたいために、妻と一緒になって八百円を調達することにした。勿論金を返したって、恩義を返してしまうことにはならないから、芸術上の負担が軽くなるとは思ってやしなかった。が何かしら、せめて金でも返したらという気持だったのだ。そして吉岡君があんなにひどいとは思わなかったものだから、八百円出来るとすぐに持っていったのだが、僕としては、もっと単純に受け容れて貰いたかった。吉岡君の気持を聞いたり自分の気持を顧みたりすると、僕は変に
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