と一致し得る。
即ち何れにしても、深くつき込んで見た倫理批評は、本当に作家をいい方に導くものである。特に近頃となえらるる人道主義なるものは、もしそういうものがあるとしたら、かかる風潮によって益々しっかと根を張るべきである。私は我国の批評家に対して、作家と同じく真剣に苦しむことと、作家にまで迫ってゆく根本的な倫理批評とを求むる。それとともに私はまた作家に向っても、倫理批評を絶するほどの作品を求めたい。
例えば、ドストエフスキーの或る作品は真に倫理批評を絶したものと私は信ずる。其処にはもう倫理を絶した大きい深い輝きが在る。然しかく云うは批評家を軽蔑するのではない。もし作家が其処まで進んだ暁は、私はまた新たに批評家に向って求むる所のものが在る。
底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2005年12月7日作成
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