だった。精神的にじっとしておれないが、然し何も考えてはいない、という様子だった。それからふと立止って、小首を傾げたが、つかつかと机に歩み寄って、例の帳簿を取出し、眼もくれずに引裂き初めた。――どうやら、俺の計画はだめになったらしい。俺は例の鉄の五重塔の中に引込んで、新たに考えなおさなければならなかった。然し、俺は坂田を嫌いじゃない。



底本:「豊島与志雄著作集 第三巻(小説3[#「3」はローマ数字、1−13−23])」未来社
   1966(昭和41)年8月10日第1刷発行
初出:「文芸春秋」
   1936(昭和11)年7月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2008年4月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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