在学理由
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)小説4[#「4」はローマ数字4、1−13−24]
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一
某私立大学の法学部で植民政策の講義を担任してる矢杉は、或る時、その学校で発行されてる大学新聞の座談会に出席したが、座談会も終り、暫く雑談が続き、もう散会という間際になって、まだ嘗て受けたことのない質問を一人の学生から提出された。植民地に於ける言語というようなことが話題になってた後であるが言語から文章へとんで、現在日本の新聞や雑誌に掲載されてる多くの文章のなかで、句読点、即ちマルやテンが、ひどく軽視されてるような観があるが、それでよいものであろうか、それとも句読点はさほど重要なものではないのであろうか、と、そういう質問なのである。
矢杉はとっさに明答もなしかね、いい加減な返事をしていると、相手の学生は、更に問題を明瞭にしてきた。――自分は半島生れの者であって、日本語にはかなり習熟したつもりでおり饒舌ること
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