ことでもありそうだね。」
「ええ、そりゃあ滑稽なんです。先生を呼びに来ようかと思ったんですが、とても来ては下さるまいと思い返して、私一人で見ていました。さっき済んだばかりです。」
「どうしたというんだい。」
「実は私が一寸へまをやっちゃったんです。」と話し出しながら彼は善良そうな眼をくるくるさせました。「この前お話しましたあの……私の室の窓から見下せる隣りの家ですね、あすこの娘に、私が横着をきめこんで、急に用事が出来た時には紙片に書きつけて投げこんでいたのです。それを親父に見つかりましてね、ひどく怒ったそうです。逓信省に勤めてる下っぱの腰弁で、まるで頑固一点張りの男なんです。私が窓から紙片を投ったのを見付けて、娘の方はそっちのけにして、私に対して向っ腹を立てたらしいんです。そして今日、何処からか広いトタン板を買って来て、自分で軒の庇のつぎ足しを初めてるじゃありませんか。私の窓から見えないようにするつもりらしいんです。空樽の上に踏台を重ねて、そのぐらぐらするやつに乗っかって、襯衣一枚で、一生懸命にかちんかちんやっています。頭の頂辺の禿げかかった所に日があたって、薄い毛の間からぴかぴか光っ
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