、憤慨めいたことを妻に洩したそうです。
「先生は故郷を忘れていらっしゃるんです。故郷をちっとも愛していらっしゃらないんです。その証拠には……。」そこで彼は長く考え込んだそうです。「私は初め、先生くらいになられると、国の者が大勢出入りしとるに違いないと思っておりました。所が来てみると、私がお家にいた間中、それから後も時々上る折に、国の者の来たためしがありません。どうも不思議です。先生が故郷を愛していらっしゃらないからです。」
 それを聞いて私は、不平を云ってるなと面白く思っただけで、気にもとめませんでした。故郷に対する私の感情は前に申した通りです。
 母上
 これは前と関係のないことですが、ついでにお話しておきましょう。
 私の家にアイスクリームを拵える簡便な器械がありました。牛乳と卵と砂糖と氷とを入れて、その蓋の上の柄を廻すんです。然し三十分近くも廻していなければなりませんので、女達は却って厄介に思っていました。所が六月の或る蒸し暑い日に、平田伍三郎がやって来た時、妻はその器械のことを思いついて、彼にアイスクリームを拵えさしたそうです。
 それからというものは、彼は私の家に来る毎に、必
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