公孫樹
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)瑞々《みずみず》しい
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)小説2[#「2」はローマ数字、1−13−22]
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「この頃の洋式の建築は可笑しなことをするもんだね。砂利を煮て何にするんだろう。」
そう云って、吉住が煙草に火をつけながら立止ったので、私も一緒に立って、やはり煙草に火をつけた。
「まさか砂利だけを煮るつもりでもなかろう。」
だが、実際砂利だけを煮てるのだった。長方形の大きな鉄の釜が二つ並んでいて、一方のには真黒なアスファルトが、一方のには大粒の砂利が、何れも七分目ばかりはいっていて、下から薪が盛んに焚かれている。アスファルトはもくもくと煮立ってるままであるが、砂利の方には一人の男がついていて、シャベルの先でしきりにかき廻している。やがて、高い建築の上から斜めに下されてる足場を伝って、両端に石油缶の桶を天秤棒で荷った男達が、幾人も下りてきて、或者はアスファルトを、或者は砂利を、煮え立った
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