らこちらに動きそうな気がするのだ。憂鬱なお伽噺の世界だね。
N君のその話を、私は今迄誰にも語らなかったが、ふと文字に書き残す気になったのである。大木の茂みとその間から隠見する文科大学のゴチックの横顔、そうした風致も地震のために壊されてしまって、あの古池と不調和な建物が周囲に立並ぶことだろうし、また、この話を聞いて面白く思いそうな、ハーン先生やケーベル先生のような人も、再び大学に現われそうにないから、せめて文字に書き残しておくのである。
底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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