奥に秘めてるのであろうか。世の中のこと、男女のこと、すべてが醜くきたなく見えるのであろうか。或いは、あまりに心やさしく、内気なはにかみやで、自分一人だけの世界にとじこもってるのであろうか。
そういうことが、私の感傷を甘やかすのである。言い換えれば、私の男心をそそのかすのである。男嫌いということを、決定的な、本質的なものだとは、誰も思わないであろう。すべての男が嫌いだ、といっても、この私だけは、そのすべての男の中には含まれていず、もしかすると彼女が心を寄せかけてくる唯一人であるかも知れないとの、自惚れた希望がある。すべての男というのが完全にすべてであればあるほど、そのすべてから除外される私一人が、輝かしいものとなる。だから、男嫌いな女と聞いて、内心にやりとするほど下卑たのは論外として、たいていの者は、心のどこかに頬笑みかけられるような思いをする。あなただってそうでしょう。なにも隠すことはない。実は、私もそうだった。
さりとて、私は女にかけて図々しい男では決してない。仲間たちからは、むしろ、女嫌いだとされていた。ところが、私のこの女嫌いは、孤独な心根からきたものなのだ。
現代に於て、
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