は……。」
 彼はちらと松木の顔を見やった。
「池でも埋めた跡ですかな。」
 松木はそっぽを向いて、額の汗を拭いていた。
「それにしても……。」
 方々を力足で踏んで見ると、陥没の範囲が次第に大きくなっていった。
「掘ってみましょうか。」
「さあーうっかり手をつけて……。」
「なあに、御自分の庭じゃありませんか。金魚池でも掘るつもりにすりゃあ……。」
 松木はじろりと彼の顔を見た。
「なるほど、金魚池……。」一寸間を置いてから早口に云い初めた。「光子が金魚が好きでしてね。随分買ってやったものですが、何しろ硝子の容物《いれもの》でしょう、じきに死んでしまうので、それきり一切金魚は止めましたが、ここに池を掘ってやりゃあ、そんなこともありますまい。なに訳はありませんよ。私一人で充分です。この通りもう崩れかかってる地面ですからね。……だが、まあ立合ってみて下さい。もし白骨でも出て来ると、厄介ですから……。実際えたいの知れない穴で……あなたが立合っていて下されば安心です。」
 縁側の方へ小走りに馳けていって、着物を脱ぎすてて、褌一つきりになって戻って来た。
 彼は鉄棒を持って、移し動かした石に腰
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