団体行動を基本とする描写法や、プロレタリア文学の階級的固執などは、各個人を解消し包括して一体となっている群衆の魂を描出するという、新たな領土を文学に提供する。
 それと共に、プロレタリア文学は、その階級闘争の実践的イデオロギーにおいて多種多様であり、且つ、唯一階級への社会還元が実現された暁には当然消滅すべきものではあるが、そしてまた、それが強権主義の陣営内にあっては如何に歪曲されるかも上述の通りであるが、然しながら、強烈なる生活意欲を文学に盛ることに於て、そして作者に新たな社会的関心を持たせることに於て、文学に特殊な生気を吹きこむものである。そしてこの見地から見ると、あくまでも個人に固執して、個人の精神内部に新たな世界を見出した心理的探求の文学は、畢竟、社会的生命を失いかけたブールジョア文学が最後に見出した逃避所であるかも知れない。或はそうでないかも知れない。それは、見る人の観点が、個人に立つか社会に立つかによって定まる。

      将来への希望

 以上、私は現代小説の趨勢を大体述べたつもりである。そして趨勢に――傾向の推移に――主として眼を止めたために、その中軸――胴体――に言
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