をとろう。」
 みよ子は笑いながら屏風の中にはいって来ました。天井につきぬけてる十二角の塔の中は、全く別天地でした。私とみよ子とは、その中で取組み合って笑いこけました。
「まあ、誰ですか。」
 声と一緒に足音がしました。
「屏風の中で何をしているんです。」
 私たちは息をつめました。ふと、身体中真赤になりました。どうにも仕様がなくて、私は逃げ出しました。みよ子も後から逃げてきましたが、私は知らん顔をして、籔の中にかけこみました。
 その時私たちを叱ったのは、誰だったか覚えがありません。けれどそれは確かに祖母ではありませんでした。祖母なら叱りはしなかったろうと思います。
 其後みよ子はやはり時々遊びに来ましたが、私たちの間には一脈の距てが出来ていました。そして彼女は小学校にあがるようになると、だんだん来なくなって、私はまた一人ぽっちになりました。
 みよ子から遠のくにつれて、私の心は益々祖母に接近していきました。私をじっと眺めてる祖母の頭の美しい髪の毛が、かすかに神経質におののくのを、私ははっきり覚えています。
 冬になって雪が積ると、私は竹馬を拵えてもらって、高い塀の上の綺麗な雪をとり
前へ 次へ
全15ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング