があるのは、第二の困難の問題である。即ち言葉で以て形態を表現するの困難さである。然しながら、吾々文学者は、言葉を以て形態を表現するの困難さだとそう云うが、美術家――殊に画家はどう云うだろうか。通俗に吾々は、線や点を基準として形態を考えているが、即ち幾何学的図形を考えているが、画家にとっては恐らく、線や点は面を表現するの手段にすぎないだろうし、色彩は面の上の現象にすぎないだろうから、そういう面を以て形体を表現するの困難さが、案外大きいものではないかとも想像される。



底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
   1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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