愚かな一日
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)夢現《ゆめうつつ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三十|目《もく》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]
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瀬川が来ているのだなと夢現《ゆめうつつ》のうちに考えていると、何かの調子に彼はふいと眼が覚めた。と同時に隣室の話声が止んだ。彼は大きく開いた眼で天井をぐるりと見廻した。それからまた、懶い重みを眼瞼に感じて、自然に眼を閉じると、また話声が聞えてきた。やはり妻と瀬川との声だった。彼はその方へ耳を傾けた。
「……どうして取るのでございましょう?」
「さあ私も委しいことは聞きませんでしたが、医者に御相談なすったら分るでしょう。もし本当にそういうことがあるなら、もう専門医の間にはよく知られてる筈ですから。然し何しろ馬一頭を、そのためにわざわざ殺さなければならないから、たとえ効果が確かでも、広く実際に応用されるわけにゆかないのだと思
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