にききいっています。そのまんなかに、ひときわ大きいのが一ついて、角のかわりに獅子のようなながいたてがみ[#「たてがみ」に傍点]がはえ、全身の毛が金色に光っていて、眼が青々とすみきっていました。
その金の毛の大きな鹿には、エキモスもびっくりしました。そんな鹿は、これまでみたこともなければ、話にもきいたこともありません。エキモスが笛をやめて、うっとりみとれますと、鹿はその青くすみきった眼で、わらっているようでした。
エキモスは鹿のそばにやっていきました。金色のふさふさしたたてがみ[#「たてがみ」に傍点]をなでてやりました。鹿はうれしそうにすりよってきます。エキモスが笛をふきだすと、鹿はそばにすわってききいっています。そうして、エキモスと金色の鹿とは、いちばんなかのよいともだちになりました。
エキモスにとっては、何もうれしいことばかりでした。白い葦笛《あしぶえ》はいくらふいてもあきません。笛をふくと多くの鳥や獣がそれをききにでてきます。みんな仲よくして、ただ笛をきいているだけです。そのなかで、金色の鹿が王さまのように光っています。エキモスはいつもその鹿とつれだってあるきます。夕方になる
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