牢屋にいれられました。だいじな笛までも、牢屋でとりあげられてしまいました。
森のなかに石でこしらえられて、兵士たちだけがばんをしている、おそろしいさびしい牢屋でした。エキモスはそこにとじこめられ、七日たてば、舟にのせられ、川をくだって海にいで、海をとおくわたって、人の住んでいないちいさな島にながされるのでした。
けれど、エキモスはさほどかなしみませんでした。なんにもわるいことをしたのではありません。今にだれかたすけにきてくれるような気がしました。
牢屋には、ちいさな窓が一つついていました。その窓からのぞくと、森の木がみえます。木のしげみをとおして、むこうに野原がみえます。エキモスは、山で羊かいをしていたときのことを、なつかしくおもいだしました。
――羊たちはどうしてるだろう。
そして毎日、その窓から、森の木やむこうの野原をながめてくらしました。だが、野原には人のかげもみえません。だれもたすけにきてくれるものはありません。
三日たちました。四日たちました。だれもきてくれません。五日……六日……七日……。だれもきてくれません。森のなかはしいんとしていますし、森のむこうの野原には
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