ったり、左にまがったりして、やがて、ちいさなたべもの屋にはいりました。
天井《てんじょう》のひくい、きたない部屋で、木のテーブルと木のこしかけとがならんでいて、ランプがくすぶっていました。でも、そこにいっぱいになった人々の顔は、どんなうつくしいあかりよりも、もっとはればれとかがやいていました。
エキモスは、部屋のおくにたっている主人のところにいって、皮袋《かわぶくろ》から金貨を五つとりだして、かんじょう台のうえにならべました。
「これで、みんなの人に、うまいごちそうをしてください」
主人は、びっくりしたようすをしました。そして五つの金貨をとって、皆の方へそれをうちふりました。
「おい、みなさん、これだけのごちそうだとよ」
わーっとよろこびの声があがりました。
声がでなくて、涙ぐんでる者もありました。エキモスもうれしくて、涙がでてきました。
酒がでました。ごちそうがでました。たいへんなさわぎでした。みんな元気になりました。やせほそった病気の者も、あしたから仕事へでかけるといいだします。みんなが仕事のことをはなします。エキモスはまた金貨をとりだして、靴のない人たちのために、靴を
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