りながめていましたが、ふと、かんがえました。
――あれで、笛をこしらえたら……。
すぐに、ナイフで、その葦《あし》をきりとって、笛をこしらえました。そしてふいてみました。が、少しもなりません。葦笛はただ銀のようにひかっているだけでした。
エキモスはがっかりしました。けれども力をおとしませんでした。次の節《ふし》でまた笛をこしらえました。がそれもなりませんでした。
三つ、四つ、五つ……いくら笛をこしらえても、どれ一つとしてなるものはありませんでした。けれど、笛がならなければならないほど、エキモスはなお一生けんめいに、笛をつくりました。今にすばらしいのができる、とそんな気がしました。
とうとうさいごの一節になりました。それでだめだったら、もうまっ白なめずらしい葦もなくなってしまうのです。
「おう、神さま!」
とエキモスはさけびました。あらんかぎりの心をこめて、さいごの笛をこしらえました。そしてこわごわ、ふいてみますと……。
エキモスはおどり上がりました。うれしさに涙ぐみました。なります、なります。なんともたとえようのない美しい音《ね》がします。
エキモスは涙をながしながら、銀
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