銀の笛と金の毛皮
豊島与志雄

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)木立《こだち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)たてがみ[#「たてがみ」に傍点]
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      一

 むかし、あるところに、エキモスという羊飼いの少年がいました。父も母もないみなし児で、毎日、羊のむれの番をしてくらしていました。
 青々とした野原に、羊たちはたのしくあそんでいます。野の花のあいだに、うつくしい蝶がとびまわっています。木立《こだち》のなかや空たかくに、いろんな鳥がさえずっています。日がうららかにてっています。
 エキモスは草の上にねころんで、歌をうたいました。口笛をふきました。草の葉でいろいろな笛をこしらえました。葦《あし》の茎《くき》でも笛をこしらえました。
 ――自分も、あの小鳥のようにうたいたい。けれども、いくらうたっても、笛をふいても、小鳥にはおよびませんでした。
 そのうちに、ある日エキモスは、葦のしげみのなかに、まっ白な葦を一本みつけました。太くてまっすぐにのびて、白く銀のように光っています。エキモスはめずらしさに、しばらくぼんや
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